WEB版誌友会

 2015.02「 いただきます を言う前に」

2015年9月8日  

2015.02

 テキスト

谷口雅宣先生著  『宗教はなぜ都会を離れるか?』

谷口純子先生著  『四季の恵み弁当』

 

平和な国に住んでいる私たちは、当たり前のように朝・昼・晩と食事を頂くことができますが、今なお世界の各地では紛争が起こり、国を追われ難民となった人々や貧しい国の人々は充分に食べ物を手に入れることができません。難民キャンプのやせ細った子供達の様子がテレビや新聞で報道されますが、何かを訴えかける様なつぶらな瞳の子どもたちの顔が思い出されます。世界の人々が平等に毎日食事が食べられるように願わずにはおれません。

今月のテーマは、「 いただきます を言う前に」です。

 

現在、地球の人口、70億人の内、8億7000万人の人々が飢餓で苦しみ、毎日の食事が満足にできない状況です。日本には昔から、食事をする時、「いただきます」と手を合わせる習慣がありますが、私たちが食事の献立を立てる時、次の事について考えて見ましょう。

食材がどのように生産されたものか意識して選んで使っていますか?

食材に肉を使いますか? 肉食の弊害について考えたことがありますか?

その食材が作られる時、輸送される時、環境に悪影響を与えることはないでしょうか?

 

地産地消を心掛けましょう。

は、季節に関係なくお金を出せば欲しいものが何でも手に入る時代です。

以前は、イチゴ、メロン、トマト、ナス、きゅうり等は春、夏の食べ物でしたが、今は温室栽培によって、年中食べることが出来ます。また、かぼちゃ、ブロッコリー、しいたけ、その他ありとあらゆるものが外国から輸入されていて地場産のものより安く売られているものもあります。家族のために、少しでも安くて美味しいものを買いたい主婦にとっては、お買い得の食材ですが、ここで、注意しなければならないことがあります。

季節外れに作られている野菜やくだもの等は灯油等を燃料として温室で栽培されていて、その時、二酸化炭素が排出されます。外国から輸入される食料も、輸入量×輸送距離を表すフードマイレージが大きく、二酸化炭素が沢山排出されています。また、体に良くない、環境を破壊する農薬が使われているかもしれません。皆様もご存じのように、二酸化炭素の排出は、地球温暖化につながります。

このことに気が付くと、地産地消を心がけ、地元で生産される季節ごとの旬のものを使うことがとても大切であることが分かります。さらに、地産地消は地元の農業を応援し、日本の農業に活力を与えます。

 

肉食の弊害について

食肉の需要は、経済の発展と共に拡大しています。戦前の日本には肉食の習慣は余りありませんでしたが、戦後、経済が急成長し生活水準が高くなると、美味しい栄養豊富な肉食が国民の間に急激に浸透していきました。今では(子共がいる家庭では特に)殆ど毎日、魚料理より手軽で比較的安い肉料理の方が家庭で食べられているのではないでしょうか。

何故、生長の家ではノーミート(肉を使わない野菜中心の料理)をお勧めするのでしょうか。

その理由の第一は、肉食することは動物の命を奪うことになるからです。仏教では、釈迦の説かれた十善の徳に「不殺生戒」という戒律があります。殺生することは因果の法則により、奪うものは奪われるという結果を招くことにもなります。

それ故「すべて神の生命の現れであり、神の生命において一体である」という宗教上の理由から肉食を避けるべきなのです。

第二の理由は、地球環境に悪影響を及ぼすからです。

地球温暖化の原因は、人間の活動から出る二酸化炭素等の温室効果ガスによるものです。

この地球温暖化の原因の一つに、私達の肉食の習慣があげられることをご存知でしょうか。

現在、地球の人口は70億人を越え、肉食消費量は、2億5000万トン(50年前の5倍)に増えています。

この食肉の需要に対して、家畜の餌となる穀物飼料を生産するために、家畜の放牧のために森林を伐採しています。こうして畜産業に使われる広さは地球の面積の30%にもなります。この森林伐採によって、森林に吸収されなくなる二酸化炭素の量は全体の排出量の17%にもなります。森林の消失は地球温暖化を加速させることになります。

また、牛、羊、などの反芻動物からは、ゲップとして二酸化炭素の23倍もの温室効果のあるメタンガスが、一頭当たり一日、500リットルも吐き出されます。地球上の反芻動物、31億頭の総排出量は一日に東京ドーム1250個分にもなり二酸化炭素に換算すると全体の排出量の18%にもなります。

このことから、生きた家畜から出るメタンなどの温室効果ガスや家畜の飼料を栽培するため、牧草地を作るための森林伐採、大量の肉の輸送、これら食肉産業全体から排出される温室効果ガスの量を二酸化炭素に換算すると、少なくとも年間326億トン、地球全体の51%を占めている結果となり、肉食がどれほど地球環境に悪影響を及ぼしているかがわかります。

 

もう一つ忘れてならない大切なことがあります。

今、地球上で8億7000万人の人々が飢餓で苦しみ、子どもは5秒に1人、一年間で約1500万人が、飢餓が原因で亡くなっていると言われています。これは、世界で生産されている食糧が不足しているからではありません。

世界の穀物生産量は23億トンで、それを世界の人口70億人に平等に分配すると、一人当たり、年間328㎏になります。一人当たりの必要摂取量は年間180㎏ですから穀物だけでも充分足りています。

それでは何故食糧が不足するのでしょうか。

それは、世界の穀物生産量の約三分の一が、家畜、家禽(ニワトリ)、養殖魚の飼料として使われているからです。牛や養殖魚を早く太らせるために、本来、牛の食べ物でないトウモロコシ等の穀物飼料を与えているからです。牛の体重1㎏増やすのに7㎏の穀物が必要です。豚は4㎏、鶏は2㎏、養殖魚は1.8㎏の穀物が必要で、牛や豚の飼料効率が悪いことがわかります。アフリカ等の発展地上国ではトウモロコシが主食ですが、世界の穀物生産量の三分の一が家畜の飼料として使われるため充分手に入れることができないのです。

つまり、私たちが肉を食べるという行為は、貧しい国の人の食糧を奪うことになるのです。この家畜に与える穀物飼料が貧しい人々の食糧になれば、世界の飢餓問題は解決できるのです。

 このように、食肉の生産が環境問題や飢餓問題に大きな影響を与えていることを知り、周りの人々にも伝えて、一人ひとりが肉食の回数を減らしたり、控えるだけで、世界の環境、飢餓問題の解決につながるのです。

 

白鳩会総裁・谷口純子先生は、『四季の恵み弁当』の中で次のようにお説き下さっています。(9頁)

 

 現在の世界では、私たちは全く犠牲のない生き方をすることは難しい。しかし、社会の明るい点、良い点を見るだけでなく、自分の生活が人や動物の犠牲のもとに成り立っていないかを省みて、それをできるだけ減らしていく生活をしたいと思う。

 

肉食は神性表現を妨げる生き方

生長の家総裁・谷口雅宣先生は、ご著書『宗教はなぜ都会を離れるか?』の中で次のようにお説き下さっています。(317~318頁)

 

本来、私たちに備わっている「神性」を地上に表現するために欲望を利用することは正しい、ということです。逆に言えば、私たちの「神性」が表現できないような欲望の使い方は間違っている、ということです。食欲も欲望の一つです。ということは人間の神性がくらまされるような食欲の使い方-食材の選び方や食事の仕方-は間違っているということです。ここに、私たちが肉食から遠ざかろうとしている信仰上の理由があります。

 

私たちは、食事が頂けることに感謝し、家族の幸せを願ってノーミートの料理をつくることは、人間の本質である「神の子」を表現する生き方であり、世界平和に貢献する生き方です。