
2021.11.06ゲノム編集ってどういうこと?
こんにちは、SNIオーガニック菜園部事務局の水島です。
先月(2021年9月)半ば、ゲノム編集技術を使って品種改良したトマトの販売が、インターネット上で始まりました。続いて今月は同様のトマトの苗も家庭菜園用に発売されました。ゲノム編集した食品の一般販売は国内で初めて。最近、耳にする「ゲノム編集」とはどういうことなのでしょうか。
◇ゲノム編集とは
「ゲノム」とは、「遺伝情報の全体・総体」を意味します。ゲノム編集技術は、「生物が持つ遺伝子の中の目的とする場所を高い精度で切断すること等により、特定の遺伝子が担う形質を改良することができる技術」(農林水産省ウェブサイトhttps://www.affrc.maff.go.jp/docs/anzenka/genom_editting.htm)のこと。
「遺伝子組み換え」が、外から新たな遺伝子をゲノムに挿入する技術であるのに対し、「ゲノム編集」は「外から新たに付け加えるのではなく、働きがわかっている遺伝子を狙って切断などして、変える」ことを指します(同、https://www.affrc.maff.go.jp/docs/anzenka/genom_editting/interview_1.htm)
◇「GABA(ギャバ)」の蓄積量が多いトマト、肉厚のマダイ
この、ゲノム編集の技術を使って、先月発売されたトマトの特徴は、ストレスの軽減や血圧の上昇を抑える効果があるとされる「GABA(ギャバ)」の蓄積量が通常より約5倍高めとのこと(「朝日新聞デジタル」2021年9月15日、
https://digital.asahi.com/articles/ASP9H5H23P9HULBJ00D.html?pn=3&unlock=1#continuehere)。このトマトの家庭用の苗木も、10月11日、家庭菜園用にネット上で発売されました。
農林水産省はほかに、ゲノム編集技術で肉厚に改良したマダイの届け出を受理しており、流通や市販ができることになっています。植物、魚のほか、ゲノム編集食品になりえるものは、家畜、微生物です。
◇安全性は?
ゲノム編集食品の安全性などは、行政がどのように審査するのでしょうか?
編集技術によって3つのタイプに分かれ、審査基準が少しずつ違っています。
3つのタイプのうち、自然界や従来の品種改良で起こりうる遺伝子変異が生じているものは、安全性もそれらと同程度と考えられる、として審査は行わず、開発事業者が詳しい情報を届け出ることになりました。一方で従来の品種改良で起こりえない変化が起きているものについては、安全性の審査が必要という制度になりました。
◇ゲノム編集の是非
ゲノム編集された食品の是非が議論されるとき、擁護する側から聞かれるのは、上記「安全性」の部分で触れたように、「従来の品種改良で起こりうる遺伝子変化は良いのではないか」「長期間かけて品種改良で行ってきたことが、ゲノム編集技術で、短期間で可能になっただけでは」といった論。
また、地球上の人口が増加する中、ゲノム編集技術は、食糧増産や気候変動対策のための品種改良の一助にもなる、と言われます。
しかし、人間の求める栄養素を多く含んだ野菜、可食部の多い魚といったゲノム食品には、人間中心主義(人間至上主義)の姿勢が感じられて仕方ありません。
私たちは、地球温暖化などの大きな問題は、「人間至上主義」が根本にあると考えています。その問題を、さらに「人間至上主義」的な方法で解決しようとするのか-。
ゲノム編集されたトマトやその苗が発売され、私たちの目の前にも選択肢が示されるようになった今、改めてそれぞれでこの問題を考えてみたいと思います。
(SNIオーガニック菜園部事務局、水島育子)