第25回参議院選挙に対する生長の家の方針
「三たび、与党とその候補者を支持しない」
7月21日投開票の参議院選挙を前に、当教団は、今回も安倍晋三首相の政治姿勢に対して明確な「反対」の意思を表明するために、「三たび、与党とその候補者を支持しない」方針を確認し、全国の会員・信徒に周知することにしました。
生長の家は、今回の参議院選挙のために自民党が掲げた公約(『自民党政策BANK』)にある、エネルギー政策と「スーパーシティ」構想に注目し、前者は原発継続の意思が明確に表われ、後者は高度技術によって国や大企業が国民を管理する制度の構築につながると考え、明確な反対の意思を表明するものです。また、日本政府が軍備拡大に力を入れ、地球温暖化対策に本腰を入れない誤りを指摘し、政策の転換を求めるものです。
1.原発継続をめざすエネルギー政策に反対します
自民党公約の「エネルギー」第1項では、「徹底した省エネ、再エネの最大限の導入、火力発電の高効率化、原発依存度の可能な限りの低減などの方針を堅持」すると記されています。これだけを読めば自民党は原子力発電を減らして再エネを最大限に増やす方針であるように見えますが、別項目をあわせて読めば同党が原発継続の強い意思をもっていることは明らかです。
同党公約の「エネルギー」第3項では、「立地自治体等関係者の理解と協力を得つつ、原発の再稼働を進めます」と明言し、「さらなる安全性向上を追求するなど、原子力に対する社会的信頼の獲得に向け全力を注ぎ、様々な課題に対応するための技術・人材の維持に向けた責任ある取組みを進めます」としています。つまり、自民党は原発をやめる気は全くないのです。そればかりか、第5項では「水素や蓄電、原子力、分散型エネルギーシステム、CCUS、デジタル制御等、脱炭素化技術の開発、実用化・普及に国を挙げて取り組み、世界の脱炭素化や水素社会の実現への取組みを主導します」として、原発を脱炭素化技術の一つに位置づけ、国を挙げて開発と普及に取り組むことを宣言しています。
では、自民党公約の「原発依存度の可能な限りの低減」とは一体何を意味するのでしょうか? すでに安倍政権は、2030年度の日本の電源構成(エネルギーミックス)を火力発電56%、原発22~20%、再エネ22~24%とすることを決定しています。しかし、2017年度の日本の電源構成は、火力発電81%、原発3%、再エネ16%ですから、安倍政権は原発の比率がまだ圧倒的に少ないと考えていることが分かります。そのため、政府は原発を次々に再稼働して2030年までに日本の電源の20%程度に達するまで利用を拡大し、2050年に向けては原発を“脱炭素化技術”と位置づけて開発・普及をめざそうとしているのです。これが自民党の言う「原発依存度の可能な限りの低減」の意味なのです。
これまで安倍政権は、重大事故を起こした福島第一原発の廃炉さえ見通しが立たない中で、国内の原発再稼働を強引に進め、さらにトルコやイギリスなど海外への原発輸出に注力してきました。しかし、世界では「脱原発」が潮流となる中で、それらの原発輸出が次々に頓挫したにも関わらず、安倍政権はまだ原発に執着しているのです。実際、野党4党が2018年3月に国会に提出した「原発ゼロ基本法案」は、与党の反対で審議すらされていません。
生長の家は、自然エネルギーの全面的な利用によって「脱原発」と「地球温暖化の抑制」を同時に実現することを求めます。安倍政権のエネルギー政策は、これと全く相容れないものであるため、これに明確な反対の意思を表明するものです。
2.国や大企業が国民を管理する制度につながる「スーパーシティ」構想に反対します
自民党公約の「経済再生」では、ロボット、IoT(物のインターネット)、AI(人工知能)、5G(第5世代移動通信システム)等の先端技術をあらゆる産業や国民生活に取り入れる方針を掲げています。その一環として、同党はAIやビッグデータなどを用いて都市の超効率化をはかる「スーパーシティ」構想の実現を掲げています。「スーパーシティ」構想とは、車の自動運転やキャッシュレス決済、ドローン(小型無人飛行機)による物流などを一体的に取り入れた都市形成を目指す構想のことです。
この構想は、都市のほぼ全ての情報(人・物・金の動き)をインターネットで収集し、そのデータをAIで分析して超効率的に都市を動かすシステムを構築するものです。政府は、無人運転の車での移動、顔認証によるキャッシュレス決済、ドローンによる宅配などによって、個人が便利で快適な生活が送れることを強調しています。
しかし、この仕組みは、高度技術によって各個人の行動に関わる様々なデータが国や大企業に収集されることになるため、政府や大企業がそのデータを使って国民を管理する制度を構築する危険性を伴います。たとえば、顔認証の多用は、路上に設置された監視カメラの映像を利用すれば、特定の個人の行動を監視して記録することが可能になります。これは犯罪者を探し出すのには便利ですが、政府にとって都合の悪い人物を監視・記録して嫌疑をかけ、警察が不当に身柄を拘束することも可能になります。また、大企業が各個人の購買や移動の履歴を収集して、ある個人に特定の製品やサービスを購入するよう誘導する手段にも利用できます。実際に中国に於てはキャッシュレス決済がこのような監視のもとに行われています。このような危険を回避する方法については、政府も自民党も何一つ説明していません。
国や大企業が高度技術を利用して国民を管理する制度が構築されるならば、個人の基本的人権は侵害され、立憲民主主義の基盤を失うことになるため、「スーパーシティ」構想に、生長の家は明確な反対の意思を表明するものです。
3.軍備拡大ではなく地球温暖化対策に注力することを求めます
2019年3月15日、ドイツ、フランス、イタリア、カナダなどの他、ネパール、バヌアツも含めた125カ国の約2000都市で、世界で初めての青少年による一斉気候ストライキが行われ、140万人以上の若者が参加しました。若者たちは、地球温暖化に対して社会が無為に時間を費やしていることへの抗議を表明し、学校への登校を拒否してデモ行進を行ったのです。この抗議運動に対して、世界の数万人の科学者たちは「デモをする若者たちの懸念は正当である」と支持を表明しました。
近年、日本でも豪雨や巨大台風に伴う災害や異常な猛暑が発生し、地球温暖化が大きな要因であることが明らかになっています。しかし、現在の日本政府の地球温暖化対策は全く後ろ向きです。安倍政権は、再エネを増やす政策を後退させる一方で、国際的な批判を無視して石炭火力発電所の増設と海外への輸出をめざしてきました。また、国の防衛予算を毎年増やして年5兆円を上回る規模に拡大させる一方で、地球温暖化対策関係の予算は5000億円程度にとどまっています。そして、相次ぐ自然災害の発生に対応するため、近年、政府はインフラの復旧や強化に年3兆円以上を支出していますが、このまま地球温暖化対策が遅れれば、さらに豪雨や台風は激しさを増し、自然災害の復旧に膨大な時間と費用と人力が必要になっていくことは明らかです。
地球温暖化という人類最大の課題に直面している今日、私たちは日本政府に対し軍備拡大に注力するのではなく、地球温暖化対策に資源を集中して国を挙げて全力で取り組むことを求めるものです。
なお、2016年と2017年の選挙の際、生長の家が「与党とその候補者を支持しない」理由として発表した次の2点は、引き続き堅持します:
1.民主主義の根幹をなす立憲主義を軽視している点
2.危険な方向に憲法を改正して“軍備拡大路線”を進もうとしている点
これらについては、以下のサイトをご参照ください:
●2017年10月4日付
第48回衆議院選挙に対する生長の家の方針「再び、与党とその候補者を支持しない」
https://www.jp.seicho-no-ie.org/news/20171004/
●2016年6月9日付
今夏の参議院選挙に対する生長の家の方針 「与党とその候補者を支持しない」
https://www.jp.seicho-no-ie.org/news/20160609/
また、会員・信徒におかれましては、今一度、生長の家総裁・谷口雅宣監修『“人間・神の子”は立憲主義の基礎――なぜ安倍政治ではいけないのか?』(生長の家刊)および生長の家白鳩会総裁・谷口純子監修『憲法を知ろう』(生長の家刊)を熟読されることをお願い申し上げます。
会員・信徒の皆さまには、このたびの参議院選挙にあたり、以上のような観点に立って候補者や政党を選択することをお勧めします。合掌。
2019年7月3日
宗教法人「生長の家」
<電子メールアドレス: info@jp.seicho-no-ie.org>