平成24年2月17日、宗教法人「生長の家」および株式会社日本教文社は、『生命の實相』等の著作権を巡る民事訴訟の控訴審判決に対する財団法人生長の家社会事業団の公式声明なるものについて、当法人および弊社の見解を表明いたしました。今回は、当法人および弊社の同見解を補足するため、本件訴訟の背景について説明させて頂きます。 本件訴訟を巡る紛争は、宗教法人「生長の家」の布教方針に不満を持つ者たちが、財団法人生長の家社会事業団が『生命の實相』等の谷口雅春先生の著作物の著作権名義を有することを利用して、宗教法人「生長の家」の文書伝道を阻害することを目的に引き起こしたものと言えます。
1.生長の家社会事業団の設立
生長の家の宗教上の最高規範である「生長の家教規」第26条第2項に「この団体は、社会厚生福祉事業の方面に教義を反映させ、これを実践することによって公益に資するため、別に財団法人生長の家社会事業団を設立し、この実行に当らせる。」とあるとおり、生長の家社会事業団は終戦後の社会的混乱の中で、生長の家の創始者である谷口雅春先生の寄付行為に基づき、生長の家の自他一体の愛の実践活動の一環として社会厚生福祉事業を行うことを目的に昭和21年1月に設立された財団法人です。
同事業団は設立後、その「寄付行為(定款)」に従って専ら社会厚生福祉事業を行ってきており、現在は主として東京都国立市にある児童養護施設「生長の家神の国寮」の運営を行っています。
谷口雅春先生は同事業団に対し、その「設立趣意書」において『生命の實相』の著作権収入を「恒久的流動資金」とし、『生命の實相』が出版される都度、その著作権収入を同事業団の社会厚生福祉事業のための資金とされました。
しかし、同事業団が社会厚生福祉事業を行っていく過程で資金難が慢性的に生じていたため、谷口雅春先生は更に『生命の實相』以外にも多くの著作物の著作権収入を、恒久的または一時的に、全部もしくは一部を、必要に応じて同事業団に寄付されて社会厚生福祉事業の資金に充てられてきました。
上記のような経緯により、同事業団が著作権収入を恒久的に受領すべき谷口雅春先生の著作物が具体的にいずれであるかが不明確となり、谷口雅春先生の相続財産の確定もできない状況となりました。そこで、谷口雅春先生ご昇天後の昭和63年3月22日、ご相続人の谷口輝子先生、谷口清超先生、谷口恵美子先生と同事業団との間で、生長の家理事長も立ち会って、同事業団が恒久的に著作権収入を受領する著作物を1点1点確定して確認書が締結され、以後、同確認書に基づいて同事業団に著作権使用料が支払われることになりました。
前述したとおり、同事業団は専ら社会厚生福祉事業を行う財団法人であり、『生命の實相』等の谷口雅春先生の著作物は生長の家の聖典であって、その出版その他の利用は生長の家の布教活動に深く関わることから、同事業団に著作権使用料を支払っているものを含めて全ての谷口雅春先生の著作物の出版その他の利用については一切、谷口雅春先生のご生前は先生ご自身が、谷口雅春先生のご昇天後は平成24年2月17日付見解に記したとおり、宗教法人「生長の家」が管理してきました。同事業団もこうした聖典の管理の実態をよく承知しており、設立以来本件訴訟に至るまでは、出版その他の利用について関与することは一切ありませんでした。
2.松下昭氏が同事業団理事長に就任した後の状況
平成10年1月、生長の家理事だった松下昭氏が同事業団の理事長に就任しました。平成12年に生長の家理事を退任した松下氏は、理事長就任から8年以上を経た平成18年12月13日の同事業団の理事会において、改選理事に関する松下理事長の提案及び別案の採決が、異例の可否同数となって紛糾し、改選をやり直すべきとの監事の仲裁があったにも拘らず、その仲裁も聞き容れず、理事長裁定によって自ら提案した通りの理事の改選案を決定してしまいました。これにより、同氏に同調する理事が理事会の多数を占めるようになりました。
その後、同事業団は宗教法人「生長の家」の意向を無視し、勝手に日本教文社に対して『生命の實相』頭注版のリニューアル化を主張したり、長年にわたり日本教文社が谷口雅春先生及び谷口輝子先生、谷口清超先生、谷口恵美子先生にお支払いしてきた『生命の實相』等の復刻版の印税について、同印税は同事業団に支払われるべきであり、谷口雅春先生及び谷口輝子先生、谷口清超先生、谷口恵美子先生への支払いは認められない、日本教文社に上記復刻版の印税の未払いがあるとして、日本教文社に二重の印税の支払いを請求してきました。更に、平成20年9月27日には『生命の實相』黒布表紙版第16巻(昭和16年9月1日刊)から「神道篇日本国の世界的使命」の中の「第1章古事記講義」の部分だけを抜き出した『古事記と日本国の世界的使命』を光明思想社(代表取締役 白水春人=元日本教文社社員)から発行させました。
前記のとおり、同事業団が、宗教法人「生長の家」の承認、同意を得ることなく、谷口雅春先生がご自身の著作物を出版されるために信徒に出資を呼びかけられて日本教文社を設立され、日本教文社に恒久的に与えられた『生命の實相』等の出版権を侵し、更に勝手に別の出版社(光明思想社)から出版するというような事態は、昭和21年の同事業団設立以来、初めてのことであり、それ以前には一切なく、考えられもしなかったことです。
3.生長の家の布教方針に対する不満グループの存在
同事業団が宗教法人「生長の家」に批判的なのは、同事業団の平成24年1月31日付声明を見ても明らかです。しかし、宗教法人「生長の家」に批判的なグループは、例えば宗教法人「生長の家」を公然と批判する「谷口雅春先生を学ぶ会」(代表 中島省治=元日本教文社社長)など、残念ながら同事業団以外にも存在します。
同事業団が教区役職者宛に送付した本年2月27日付書面に[政治運動及び文化運動も含めた国家社会救済の一大運動が「生長の家社会事業団」]とあるように、そうしたグループは、現在の宗教法人「生長の家」が、かつてのような政治活動を伴う“愛国運動”に取り組まず、環境問題に力を入れていることなどに不満があるようです。
同事業団は、例えば松下理事長が「谷口雅春先生を学ぶ会」が責任編集の『谷口雅春先生を学ぶ』誌平成24年4月号において本件訴訟について語ったり、同号52頁の[新編『生命の實相』奉賛会]のご案内]という欄には[「財団法人生長の家社会事業団」、「谷口雅春先生を学ぶ会」、「株式会社 光明思想社」の三団体が結束し、志を同じくして(後略)]と記されているなど、そういう宗教法人「生長の家」の布教方針に不満を持つグループと手を結び、同事業団が谷口雅春先生の幾つかの著作物の著作権名義を有していることを利用して、宗教法人「生長の家」の文書伝道を阻害することを目的に、本件訴訟を巡る紛争を引き起こしたものと言えます。
すなわち、松下氏が主導する同事業団は、同事業団が著作権名義を有する著作物について日本教文社の恒久的な出版権を否定し、宗教法人「生長の家」に批判的な白水氏が社長を務める光明思想社(同社は『谷口雅春先生を学ぶ』誌の発行所)から、それらの著作物の出版をさせています。この同事業団の出版行為は、谷口雅春先生による同事業団の「寄附行為(定款)」に定められた事業目的ならびに事業の範囲を逸脱する宗教活動を目的とするものと解されます。
文書伝道を特徴とする生長の家にとって、『生命の實相』をはじめ谷口雅春先生の著作の出版その他の利用は、布教活動の基本です。したがって、同事業団はたとえ著作権を有するとしても、それは社会厚生福祉事業の資金として著作権収入を受領するためであり、出版その他の利用の決定、管理については、布教活動を統括する宗教法人「生長の家」が行い、出版については谷口雅春先生の提唱により、生長の家の書籍を出版する会社として設立された日本教文社が行ってきたものであります。
ところが、松下氏の主導するところとなった平成18年12月以降、同事業団はそれまで認めてきた上記の状況を否定し、自らに著作権が存するとする著作物の出版その他の利用を行うことにより、宗教法人「生長の家」の文書伝道を阻害しようとしているのが、本件訴訟を巡る紛争の本質です。このような同事業団の行為は、谷口雅春先生が同事業団を設立した趣旨に反するものであり、谷口雅春先生の御心に反するものであることは明らかです。
誌友・信徒の皆様には、この度の訴訟を巡る以上の背景をご理解いただき、生長の家の布教方針に不満を持つグループの生長の家に対する色々な批判活動に乗ぜられることなく、生長の家の正しい教えを護持する使命は、谷口雅春先生の正統な後継者であられる生長の家総裁とその指揮監督下にある生長の家本部にあることを銘記され、これまでと変わらず、布教活動と信仰生活を堂々と、明るく楽しく伸びやかに進められますことを念願して、結びとさせていただきます。
以上