素材を生かしたリメイクで、新しく生まれ変わる

 今回はリメイクのアイデアを2つご紹介します。1つは端切れのリースです。マスクを手づくりした際に出た阿波しじらの端切れを生かす方法はないかと考えていた時に、端切れをリボンのように結んでリースを作ってみようとひらめきました。リースの芯は、畑から採ってきたツルウメモドキで、昨年のクリスマスリースで使ったものを再利用しました。玄関のドアに飾ると、端切れがよみがえったことに嬉しさを感じました。

マスクを作った際に出た阿波しじらの端切れ
色鮮やかなリースとなってよみがえった

 もう1つは、竹のタブレットスタンドです。竹の貯金箱にヒビが入り、再利用できないかと考えた時、フェイスブックで見た竹のスマホ置きからアイデアを得て、タブレットスタンドを作ろうと思い立ちました。私はのこぎりが使えないので、主人の友人に竹を切ってもらいました。サンドペーパーで磨いた後、2つの竹を両面テープや接着剤で貼り付けて、絵を描くと、愛らしいスタンドになりました。アイデア次第でものを生かせることに、ワクワクしています。

使い心地が最高の、竹のタブレットスタンド。スマホや本のスタンドとしても使うことができる

(津田寿美 SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.137(2021年8月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.61」

※この記事は2021年に執筆したものです

「こもれびアナザーストーリー」Vol.8

作品名『Tシャツヤーンのひもポシェット』
作者:Kiramekiyukie

―――今回お話を伺ったのは、『Tシャツヤーンのひもポシェット』を製作されたKiramekiyukieさん。日ごろ、日用品や仲間のつながりを大切にされているKiramekiyukieさんならではのお話をお聞きすることができました。どうぞお楽しみください。


作品ストーリー

どのようなきっかけで、この作品『Tシャツヤーンのひもポシェット』をつくろうと思いましたか?

 道具や衣服を長く大切に使う両親に育てられたことで、専業主婦のときは手づくりやリメイクを当たり前に楽しんでいました。
 4人の子どもを育てながらフルタイムで働き始めてからは、仕事の責任が重くなるにつれて早出や残業が増え、できるかぎり手づくりにこだわりつつも、その楽しさを忘れかけていました。

 そんなときに「Tシャツヤーン」のことを知りました。これは、古着やTシャツ工場で出たハギレを裁断してつくられていて、エコな編み糸です。自宅にある着なくなったTシャツを、自ら切ってつくることもできます。
 「Tシャツヤーン」と言っても、Tシャツだけでなく、どんな生地でも編み糸になります。不用になった衣類に新しい生命を与える絶好の機会となりました。

 仕事で遅く帰っても、少しの時間でも色やデザインを考えてTシャツを選び、よく切れるハサミでザクザク切って、編み糸をつくります。同じ形に裁断しますが、同じ柄にはなりません。思い描いた通りに編み上げると、仕事で疲れた頭もスッキリして、楽しみながら元気になっています。

――仕事で疲れていても手づくりをすることでスッキリする気持ち、分かります。楽しいですよね。

 編み物は好きですが、編み方は自己流です。そんな中、今回“森の中のオフィス”に展示したような「Tシャツヤーン」で手編みした作品をSNSで投稿していたら、「教えてほしい」と言われてミニイベントを開催したことがあります。しかし、私は左利きのため、右利きの方20人に教えたときは本当に困り果てました。編み物の上級者にやり方を理解していただいてから、手分けして初心者に教えていただく手順で、なんとかやり遂げました。

 この経験を機に、私は右手でも編めるように訓練し、利き手に関係なく皆さんに編み方をレクチャーできるようになりました。

――すごいですね! 左右どちらの手でも編めるなんて!


材料のポイント

材料を探すときの基準や大切にしていることはありますか?

 長年使用して、古くなった洋服や日用品の中から愛着のあるもので「リメイクできないだろうか?」とよく考えます。そのモノの声を聴くように、対話するように、思い出や感謝をもって考えます。

 すぐにアイディアが思いつかない場合は、そのまましばらく置いておきます。「SNIクラフト倶楽部」のFacebookグループ(※メンバー限定・非公開)などの投稿記事を参考にして、アイディアがひらめいたら取りかかります。うまくいかず、そのモノに感謝しながら断捨離することもありますが、うまくいったときのうれしさは格別です。

――すぐに新しい材料を購入されるのではなく、まず家にあるものを生かすことができないか常に考えていらっしゃるのですね。日ごろからモノを大切にされ、感謝して使われている様子が伝わってきます。

 SNSでエシカル(倫理的)な生活をしている方の投稿では、自然素材を使ったり、リメイクをするアイディアが満載です。生活を丁寧に楽しみながら、地球環境と調和して生きている、そのような尊敬できる方がたくさんいらっしゃいます。そういった方々とのつながりも大切にしています。

――SNSで知り合った方々の発信も参考にされていることで、ご自身のアイディアも膨らみ、新しい作品がどんどん生まれていくのですね。

スマホケースをリペア。手づくりTシャツヤーンで使わなかったTシャツの前見頃のプリント部分を、ケースに合わせて切り取りボンドで貼り付けたもの。
豆乳パック・空き箱と、子ども達が小学生の頃に使用していた給食のナプキンを再利用し、ペンスタンドに。両面テープであっという間に完成。子ども達のお下がりの短くなった色鉛筆も取り出しやすいように、仕切りに段差をつけました。
お菓子の箱に沿って麻紐で外側を編み、内側には主人の古着のデニムシャツを再利用した、主人のヘッドフォン入れ。私がビデオ通信で会議やイベントをすることが増え、優しい主人は大好きな音楽やテレビをヘッドフォンを使って楽しんでくれています。ヘッドフォンさんにも感謝を込めて、指定席を作りました。
使わなくなったカフェカーテンをそのまま使ったソファーカバー。とても気に入っています。

モノづくりのスタイル

普段、どのようにクラフトを楽しんでいますか?

 場所はクラフトの作業部屋ですることが多いです。
 「思いついたらすぐに実践する」ことが私のモットーです。アイディアが浮かんだらすぐにやってみて、ダメなら次に行きます。

 生長の家の瞑想法である「神想観」を実修している最中にひらめいたことは、特にすぐ実践してみます。集中してクラフトに没頭できる時間は、至福の時ですね。

――アイディアが浮かんだら、いてもたってもいられなくなる。本当にそうですよね~


失敗は成功のもと!

ずばり「失敗は成功のもと!」と思う話がありましたら教えてください。

 Tシャツヤーンの手編みのショルダーバッグを長女が愛用してくれたことがうれしく、次は夏バージョンとして「麻ひも」を素材に同じ要領でつくりました。

 麻ひもは国産で手芸用のものを購入して編みました。長女は喜んで使ってくれたのですが、麻ひもの毛羽立った糸がスカートにこびりついてしまいました。その糸くずを取り除くのが一苦労で、とうとう使えないバッグとなってしまい、残念でたまりませんでした。

 「何か解決法はないものか?」と悩み、SNIクラフト倶楽部の友達に相談をしました。たまたま、その友達も同じように困った経験があり、「麻を柿渋で染める」というアイディアが浮かんでやってみたら、上手くいったという話をきくことができました。

 そこで私もすぐに実践してみました。すると、麻ひもの繊維がしっとりと落ち着いて毛羽立ちが抑えられ、色も深みを帯びて、すてきなバッグに変身しました。

――「柿渋」が功を奏したとは意外ですね! 一度は、使えなくなってしまったバッグが「柿渋」というアイディアのおかげで、よりすてきなバッグになるなんて、まさに「失敗は成功のもと」ですね。

 クラフトも料理も自分の身体を使ってつくり出す喜びは同じだと思います。アイディアが現実化する喜びを知るために、人は生きているのではないかと思ったりします。

――自分の思いを形に表現できるのがクラフトのいいところですよね。

――最後に、作品のアピールポイントを教えてください。

 麻ひものバッグは、簡単にすぐ編めるのが良いところです。ほかの方のように一生懸命につくったわけではありませんでしたので恥ずかしいくらいです。
 しかし、失敗作品からよみがえった喜びがこの作品に込められています。そこがアピールポイントかな(笑)


さいごに

 連載8回目となる「こもれび アナザーストーリー」、いかがでしたでしょうか?

 「失敗は成功のもと」をあらためて学びました。SNSなどを通して多くの方々のアイディアも取り入れると、より一層魅力的な作品づくりにつながっていくのですね。モノづくりがますます楽しみになりました。

 次はどんなアナザーストーリーを聞くことができるのでしょうか?

 次回もどうぞおたのしみに~♪♪

 (聞き手:SNIクラフト倶楽部・永井暁)


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作者インタビュー「こもれびアナザーストーリー」Vol.7
作品名『リネン×和紙糸の食器洗いクロス』 / 作者:手作り雑貨ふわふわ工房


「こもれびアナザーストーリー」Vol.7

作品名『リネン×和紙糸の食器洗いクロス』 
作者:手作り雑貨ふわふわ工房

――今回お話いただいたのは、『リネン×和紙糸の食器洗いクロス』を製作された
手作り雑貨ふわふわ工房さん。この食器洗いクロスができるまで、さまざまな苦労があったと教えてくれました。

作品ストーリー

どのようなきっかけで、この作品をつくろうと思いましたか?

 2019年当時、全国のSNIクラフト倶楽部のみなさんが、自然素材で食器用タワシをつくりFacebookグループ(メンバー限定・非公開)にシェアされる投稿をみて、自分もタワシを作りたいと思ったのが始まりです。
 
 「洗剤を使わずに洗えてエコ」と一般的にいわれるエコタワシは、アクリル毛糸を使用しているため、その細かい毛糸のくずが排水溝から流れ出し、海洋汚染に繋がっていると知り、自分の台所まわりで使用しているタワシについて考え始めました。

 まず最初に「麻紐は食器やフライパンが傷つかないのかな?」と思い、柔らかい生地を探すことにしました。近所に手芸用品店がないので、忙しい仕事・育児・家事の合間をぬってインターネットで生地を探す日々が続きました。


材料のポイント

これまでどのような材料で試したのでしょうか。

 最初に購入したのは、国産の麻100%の生地でした。少し高めの生地でしたが、食器を洗った時に汚れが目立たないよう、緑色を選んでインターネットで注文しました。
 届いてみると、イメージしていたものと若干異なり、サラサラの質感でブラウスなどが作れそうな上質なものでした。ですがせっかく注文したので、一応クロスを作って食器を洗うことにチャレンジ。
 しかし目が細かく水を含むとかたくなり、食器に対してすべらないので、とっても洗いにくいことが判明!さらに、緑色の麻の繊維が出てきて、これは諦めました。

――食器の洗いやすさや使いやすさは、毎日のことなので大切ですよね。

 その後もインターネットで引き続き探し、次に注文したのは、「ザ・麻!」という感じのジュートの生地です。こちらは、はさみでカットすると繊維がホロホロとほどけてきて、縫う時でさえも扱いにくく、食器洗いにして洗ってみても、かたすぎて器やコップの隅まで洗えず、こちらも諦めました。

(もったいないので、布の4辺を三つ折りに折り込み、 ぼろぼろとほつれないように縫って、シンクや排水溝を洗うクロスとして活躍しています)

 それでも諦めきれず、布製の食器洗いなどを検索していると、運命の出合いが。

 タテ糸は亜麻(リネン)、ヨコ糸は和紙のワッフル生地を発見しました。

 お試し用にと購入して、早速作ってみると、今までで一番いい! 
 主人も使ってみて「洗いやすいよ」と言ってくれました。
(ただメーカーに問い合わせた所、製造は日本国内ですが、リネン繊維と、和紙糸にする繊維は国産では無いため、輸入しているとのこと)

――聞くところによると、糸もこだわったようですね。

 はい、普段使っているミシン糸をよーく見ると、ポリエステルと表記されてました。糸まで気にしていなかったと気づき、日本製のコットンのミシン糸に変え、すべて自然素材の材料を使うことを心がけました。

手縫いする際の手芸糸も、オーガニックコットンの糸にチェンジしたそう

モノづくりのスタイル

普段、どのようにクラフトを楽しんでいますか?

 食器洗いクロスをはじめ裁縫をする時は、ミシンやアイロンを使うため、いつも家の決まった場所でクラフトしています。
 以前は自分の休みの日に、まとめてクラフトすることが多かったのですが、最近は子ども達の宿題の時間や、遊んでいる時間が多いですね。子ども達が頑張っていたり、楽しんでいる時間に、「私もなにか作ろう」と思うからかもしれません。

 また、隙間時間にやる事も多いです。食事の支度中、野菜を刻んで鍋で煮ている間の15分とか、保育園へお迎えに行くまでの20分など。
 自分の好きな時間を持つことで、家事や育児にも良い影響があるように感じていますので、進んでクラフト時間を確保するようにしています。クラフトは、作品が完成する度に達成感を味わう事ができるので、そのたびに嬉しくなり、子ども達からも「可愛い」などと言ってもらえることで、さらに喜びに繋がっています。

――生活の中に、クラフトを楽しむことが溶け込んでいるのですね。

最近のマイブームである東北津軽地方の伝統工芸「こぎん刺し」の材料・道具一式。場所・時間を問わずできるのもお気に入り。
刺しかけのこぎん刺しと図案
完成したこぎん刺しのバッグチャームは、離れて暮らす両親にプレゼント

失敗は成功のもと!

ずばり「失敗は成功のもと!」と思う話がありましたら教えてください。

 失敗はいろいろあります(笑)たくさんあります(笑)
 ですが失敗した時には、次はどういうふうに作ったらうまくいくのか、キレイに仕上がるのか、長さは何センチにしたら良いかなどメモをとって、残しています。

 そして子ども達に、「ここ失敗しちゃった~」と伝えます。「ここまで頑張ってきたきたのに、残念!」という気持ちで伝えると、「お母さん、だいじょうぶ!失敗は成功のもとだから、またがんばればいいよ」と励まされるのです(笑)。さらに、多少の失敗は「ぜんぜん気にならないから、わたしが使うよ」と言って使ってくれます。

 子ども達とのこういった交流のおかげで、もっと良いものを作ろう、ていねいに作業をしようと思えるのかもしれません。

刺しゅう糸の色の組み合わせや刺し方に失敗して、何枚も作り直した刺しゅうの布マスク。やっと完成して生光展(※)に出品しました。
(※生長の家の美術公募展)

子ども達のきんちゃく袋。ミシン目が歪んでいる所もありますが、喜んで使ってくれています。
プレゼント用につくったエコバッグ。ポケット部分にたたんだエコバッグが入る予定でしたが、縫い目が少しズレたために、うまく入らなかった。でもバッグのポケットとして使ってくださっているようです。

――失敗したことも、具体的にメモに残して次に活かしたり、お子さんとのコミュニケーションになるのですね。ステキなお話ですね。


作品のここに注目

試行錯誤してできた「食器洗いクロス」ですが、しだいに周囲にも拡がっていったそうですね。

 はい、さまざまな種類の素材や厚みの生地でつくり試すことを繰り返し、気がつくと約3ヶ月が経っていました。

 今では生長の家国際本部“森の中のオフィス”内にある「SHOPこもれび」でも販売され、周囲の人にも使ってもらえてありがたいですね。

 2019年には近所でミニイベントを開催して、マイクロプラスチックの問題にも触れつつ、みなさんに作り方をレクチャーする機会もありました。また、SNIクラフト倶楽部のFacebookグループ(メンバー限定・非公開)にも投稿すると、「興味があります」「自分も作ってみたい」という声も上がり、みなさんが作った麻や綿のさまざまな形の食器タワシが紹介されて、ますます嬉しくなりましたね。

――毎日使うものを通して、環境問題や平和について考え、行動にうつしていく人たちの輪がますます拡がっていったのですね。


さいごに

 連載7回目となる「こもれび アナザーストーリー」はいかがでしたでしょうか。
 この食器洗いクロスができるまで、素材・材料選びから使い心地の検討まで、さまざまな苦労があったのですね。家事で毎日使うものだからこそ、使いやすくて、少しでも環境に負荷をかけないものを、自らの手でつくるというお話でした。
 次回は、どんなクラフトばなしを聞くことができるのでしょうか。
 どうぞ次回もおたのしみに!

(聞き手:SNIクラフト倶楽部・松尾純子)


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作者インタビュー「こもれびアナザーストーリー」Vol.6
作品名『森の小人たち』/ 作者:ひだまりの家

森の小人たち

森の小人たち

「こもれびアナザーストーリー」Vol.6

作品名『森の小人たち』
作者:ひだまりの家

――今回お話いただくのは、『森の小人たち』を製作されたひだまりの家さんです。
ひだまりの家さんはクラフトを通じて、脱プラスチックに取り組まれています。
また、材料は竹やとうもろこしの皮など自然のものを使用され、作品はおしゃれな小物から実用的なものまで多岐にわたっています。


作品ストーリー

どのようなきっかけで、この作品『森の小人たち』をつくろうと思いましたか?

 SNIクラフト倶楽部に入部したことで、これまで買うことの多かったクリスマスの飾りを、手づくりしたいと思いました。このクラフト作品も、買わずにつくることができるかな?というワクワク感がありました。

――SNIクラフト倶楽部への入部で、気持ちに変化が生まれたのですね。ワクワクしながら作品に挑戦するって、すてきですね。

 綿(わた)は、今回の作品をつくった年に参加した「綿栽培のボランティア」(無農薬・無化学肥料で栽培)で収穫したものを使いました。地元・兵庫県加古川市では、地域の地場産業として明治時代から綿産業が発達しています。収穫の際に指導してくださった方が、「農薬は植えているところだけではなく、その一定の場所周辺にも散布しない」とのお話に驚きとともに感銘を受けました。

 綿紡ぎ体験では、綿繰り機(わたくりき)で綿とたねを分ける作業をさせていただきました。まわりには綿製品がたくさんありますが、綿が衣類などの製品になるまでに、糸を紡いだり、染色したり、機織りをするなど、気が遠くなるほどの労力が掛かっています。今回ボランティアに参加した事で、改めてその大変さを感じることができ、綿製品の有り難さに思い至りました。

 この時にお会いしたプロジェクトリーダーの方が言われていた、「この地に綿を栽培することは、気候や土壌などが向いていて、本来の植生に基づいている」という自然を重んじる考え方が素晴らしく、印象に残っています。

――綿製品が地場産業の地域で暮らしながら、実際に綿(わた)の収穫を体験されたことで、綿製品を仕上げる大変さを感じられたのですね。


材料のポイント

材料を探すときの基準や大切にしていることはありますか?

 庭などにある自然の素材を使うこと、手元にあるものを生かすことを大切にしています。最近つくったこちら(左下)の作品は、市内にある工務店さんから県産木材の端材をいただいてつくりました。

工務店の端材でつくったチャーム(左)とペンダント(右)
庭でローズマリーを摘む。染色だけではなく、消臭剤や煮出してリンスに使うことができます

 工務店さんのインスタグラムをフォローをしていて、「自由に使ってください」という発信を見て、端材をいただきに伺いました。この工務店さんには、以前にミニイベント(自身が主催)の会場としてもお世話になりました。
 材料を探すときは、SNSの発信や雑貨屋さん、喫茶店のインテリア、地域で開催される街角ミュージアム(※)の作品などを参考にしています。

――インスタグラムなどのSNSも活用して、地域の方々との交流を大切にされているのですね。また、地元の工務店で地産地消の材料を入手されたり、街角ミュージアムのような地域の催しでクラフトのアイディアを発見されたりと、実際に足を運ばれて行動されていることがすばらしいなと思います。

※街角ミュージアム・・・街全体をミュージアムに見立て、作品やワークショップなどを楽しめる企画


モノづくりスタイル

普段、どのようにクラフトを楽しんでいますか?

 リビングなどで音楽をかけることもあります。
 時には、屋外(自宅駐車場)で行うこともあります。実家でもらった茣蓙(ござ)を敷いて、木材にやすりをかけたり、竹を割ったりします。おひさまのもとでするクラフトは、より“今”の感覚を味わえ、リフレッシュにつながりますね。

道具やハギレをしまっている箱
右側の白い丸型の箱は、カレンダーから切り抜いた色用紙を貼っているお気に入りのもの

 ダーニングなど修理をするリペアクラフトは、必要に応じて場所を変えて行っています。

端がほころびた眼鏡ケースにハギレをあててリペア

 また、天然の素材を使って手づくりすることで、プラスチックフリーにできないかな、これあったらいいな、と思うものをつくるようになりました。買う前にまず、家にあるものでつくれないかと考える習慣ができ、自然の美しさや恵みに気がつくようになりました。

竹やトウモロコシの皮を、バランとしてお弁当の仕切りに
自然素材の布で、毎日使うお茶パックを手づくり。繰り返し使えます。
使い捨てのお掃除シートが石油由来とわかり、古いタオルでつくったモップ。洗って使います。

――クラフトが気分転換になったり、日々の生活を豊かにしてくれると感じられながら、リラックスした気持ちで取り組まれているのですね。私も参考にしたいです。


失敗は成功のもと!

ずばり「失敗は成功のもと!」と思う話がありましたら教えてください。

 製作途中で「うまくいかないな」と思うことは何度もあり、やめてしまったこともあります。

 一方で、「最後まであきらめないでよかった」と思うこともありました。

 例えば、2021年につくった竹製のマドラーは、持ち手を接着する際にすき間が埋まらず、どうしたものかと思案していました。しかしその時、持ち手の側面に、U字型に曲げた1本の細い竹を沿わせ、すき間を埋めることを思いつきました。持ち手の先端は、台所のフックに掛けることができ、もともと思い描いていたものよりも、良いものに仕上がりました。  
 導かれるようなひらめきは、「クラフトの神様が降りてきた」って思ったりします。

改良前:マドラーの持ち手がかみ合っていない
改良後:側面にU字型に竹を沿わせ、先端はフックに掛けられるようになった

――竹製マドラー、もともと思い描いていたものよりも良いものができあがったときの喜びはひとしおだったと思います。普段から積極的にクラフトに取り組まれていることで、思いもよらぬひらめきが出てくるのですね。

 また、スマホケースを厚紙と布でつくり、しばらく使っていましたが、強度がもうひとつで今は使っていません。いつか、木製のスマホケースをつくってみたいと思っています。

――新しい目標を見定めていらっしゃるところがすばらしいです。木製のスマホケース、作り甲斐がありそうです。一度、布でつくってみた経験が、次のクラフトにつながっていく楽しみもありますね。

竹製コースター
ナタを使って均等の厚さに竹を割るのが難しかった

作品のここに注目

今回、展示された作品について教えてください。

 小人の足元はどんぐりの殻斗(かくと)です。ビックリするほどサイズがぴったりでした。腕は、南天の実やどんぐりで表現したことで、意外性と可愛らしさが両立できたかな、と思います。

――今にも踊り出しそうなとてもかわいらしい人形ですね。どんぐりの殻斗は、本当に小人の靴のように見えます。すべてのパーツが全体的に調和していて、とてもすばらしいです。

※殻斗(かくと)・・・ナラ・クヌギ・シイ・クリなどブナ科植物の、実の一部または全部を覆う椀(わん)状・まり状のもの。

こびとの足元はコナラの殻斗、顔はぎんなん、腕はドングリや南天の実を使用

さいごに

 連載5回目となる「こもれびアナザーストーリー」。

 地元でのつながりを大切に、身近な材料や地域のものを活用して、さまざまなクラフトを楽しまれているひだまりの家さんのお話を聞くことができました。

 試行錯誤を繰り返しながら、よりよいものをつくりだそうという気持ちが、作品を見る人の喜びにつながっていくのだと感じました。

 今回の記事を通して、クラフトを始められるみなさまには、これからさまざまな試行錯誤を通して、すてきな作品づくりに挑戦して頂ける機会になればと思います。また、すでにクラフトを楽しんでいるみなさまには、これまで経験した試行錯誤や、アイデアが浮かんだときの喜び、達成感を得たときの気持ちを思い出していただくなど、ご自身のクラフト時間を楽しく振り返るきっかけになっていましたら、嬉しく思います。

 次はどんなアナザーストーリーを聞くことができるでしょうか?
 次回もどうぞお楽しみに!
(聞き手:SNIクラフト倶楽部・岸田) 


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作者インタビュー「こもれびアナザーストーリー」Vol.5
作品名『クラフトテープのカゴ』/ 作者:あーちゃんのカゴ


幸せな気分になれる草木染め

 草木染め。ちょっと難しそうで、やり出すまでは腰が重い。でも始めてみると夢中になる。そして必ず幸せになれる。そんな感じがします。
 落ち葉、花びらなど、自然にある沢山のものが染料となるので、外へ出かけて夢中になって探すことがあります。でも最近は、玉ねぎの皮や黒豆の煮汁を使って、キッチンで料理をしながら気軽に染めることも大好きです。媒染を何にするかによって、染め上がる色が違ってきます。(ただし食品と混ざると危険なので、キッチンで銅を媒染にするのはお勧めできません)

玉ねぎの皮を煮出した染液に、染めたい生地を入れる。その後、火を消してしばらく置き、色落ちがなくなるまで水洗いをする
柔らかい色に染まったTさんの草木染め。染料は左から、玉ねぎの皮、黒豆(いずれもミョウバン媒染)、紅葉(鉄媒染)

「色ムラができてしまった」「この色の具合はどうかな」と染めたばかりのときは不安に感じることもありますが、干して仕上がりを見ると、調和した色に仕上がるものです。草木染めのものが身近にあると心が落ち着く感じがします。
 本格的に草木染めをするのは大変と思われる方には、玉ねぎで染めるのをおすすめします。薬局で売っているミョウバンと乾燥させた玉ねぎの皮だけで綺麗な黄色に染まりますよ。挑戦してみてはいかがでしょうか。

玉ねぎの皮とミョウバンで鮮やかな黄色に染まった布を、日光に当てて乾かす

(S・T SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.127(2020年10月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.51」

※この記事は2020年に執筆したものです

草木染めの愉しみ②

 紅葉した桜の葉で染めることができると知って、早速煮出してみました。すると赤ワインのような濃い色が出ました。私たちがイメージする桜色は花びらの色ですが、桜色に染めるには花びらではなく葉や枝を使います。桜は、枝にも幹にも葉っぱにも、木全体が桜色を持っていることが分かり驚きました。
 さらに、桜は様々な色に化けます。色を鮮やかにし色落ちを防ぐための媒染を行わないと淡い桜色になり、アルミや鉄、銅などの媒染によって、ピンクにもオレンジにも茶色にも変化します。全く同じ条件で染めても、上手くいく時とそうでない時があり、難しいけど面白い。

紅葉した桜落ち葉を煮出す。落とし蓋のように、枝も一緒に。少しの落ち葉で、たくさんの染液ができる
煮出した染液は鮮やかなワイン色になった。「とても魅力的な色で、様々なものを染めてみたくなります」

 また草木染めの楽しさを知ると、白いものを無性に染めたくなります。文具店で和紙を手にした時、「何かで代用できないか?」としばし考えを巡らすと、「障子紙の余りがある!」と閃きました。染めてみたら、とても上手くいきました。不要なものを活かせた時、すごく気持ちいいものです。染めた障子紙を使って、ランチョンマットやポチ袋などを作りました。

水で薄めた染液に、障子紙をしばらく浸す。「障子紙は意外に丈夫で、この後、手で絞っても破れることはありませんでした」
桜の落ち葉で染めた障子紙で作ったポチ袋(右)。左は巨峰の皮で染めたもの。ねずみは自作の消しゴムはんこを押した

(津島昌子・SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.124(2020年7月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.48」

※この記事は2020年に執筆したものです

草木染めの愉しみ①

 昨年の秋、白いサラシを染めてみたくなり、草木染めに挑戦しました。図書館で本を借りると、身の周りの色々なもので染められると分かり、たまねぎの皮や笹の葉、巨峰の皮、びわの葉、ごぼうのアク抜きで出た茶色い汁でも染めてみました。草木染めの楽しさを知ると、自転車に乗っていても、すすきやどんぐり、葛の葉など、目に飛び込んでくるものすべてが染めの材料に見えて、自然がぐっと近くなりました。

淡い色合いが美しい、津島さんお手製の草木染め。左から、巨峰、ローズヒップ、葛、笹の葉、ごぼう、たまねぎで染めた
たまねぎの二番煎じの染液で染めたサラシを使って、蜜蝋ラップを作った

 私が感じた草木染めの魅力は、一筋縄ではいかない意外性です。植物の色素を鮮やかに発色させ、色落ちを防ぐための媒染という工程によって出る色は変化するので、染め上がるまで仕上がりは分かりません。同じ材料を使っても染める度に微妙に違う色を見せてくれるのです。
 面白いのは、緑の葉で染めても緑色にはならいことで、緑色を出すには一度黄色に染めてから藍色で染めると知り、緑という色の奥深さを知りました。何種類も色が揃ってくるととても美しく、古の十二単衣はこんなふうに染められたのかなと、平安時代に思いを馳せました。

笹の葉を煮出して草木染めてみると、緑色ではなく、若竹色に染まった

(津島昌子 SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.123(2020年6月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.47」

※この記事は2020年に執筆したものです

天然の竹皮で、弁当かごを編む

 脱プラを意識しだしてから、急に竹の皮が気になりはじめました。竹皮は、竹の子の時期の皮ではなく、若竹がぐんと伸びる時期に、脱ぎ捨てられている皮を使います。
 知り合いが所有する山で、竹皮を採らせてもらえることになりました。青々とした若竹に、ちまきなどを包む、あの見慣れた竹皮が貼り付いているのを見た時は興奮しました。採取した竹皮は、よく洗って、汚れを拭き、まっすぐに伸びるように重しを載せて、乾燥させます。しっかりと乾かすのがポイントです。

若竹から竹の皮を採取した
採取した竹の皮は水洗いした後、1枚1枚うぶ毛を拭き取り、その後、重しをして伸ばして干す

 下処理した竹皮でお弁当かごを編みました。初めて作ったので、頭に完成のイメージはあってもなかなか形にならず、何度か諦めかけました。クラフト編みの本を読んだりしながら、別の日に気を取り直して再チャレンジし、やっと形になりました。難しかったです。
 ケモノのようでちょっと怖い竹皮の模様が、こんなに美しいとは思いませんでした。抗菌作用もあり、編んでいてもしなやかで、強く引っ張っても破れません。先人の知恵に脱帽です。

何日も干して乾燥させ、帯状に切った竹皮を編んでいく
津島さんが天然の竹皮を編んで作った弁当かご。軽く丈夫で、手づくりの温もりも感じられる

(津島昌子 SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.122(2020年5月号)「つくる、祈る、日々の生活 No46」

※この記事は2020年に執筆したものです

【つくり方】簡単・オシャレな木製バターナイフづくり

焼きたてパンの香りに包まれた食卓。
自分で手づくりしたバターナイフを使って、熱々のパンにバターを塗る。

そんな至福のひとときを、過ごしてみませんか?

初めて木工に挑戦する人でも大丈夫。
一本の端材からオシャレなバターナイフができちゃう感動を味わえます。


準 備 ・ 材 料 

材 料

端材・木片(今回は山梨県産・栗の木を使用)を1本

  ※木材の種類は粘りのある堅い木広葉樹がおすすめです。

   杉などの針葉樹は柔らかいので削りやすいですが、
   パキッっと折れることがあります。

道 具

・鉛筆 

・ペン

・糸鋸(いとのこ) 

・小刀 

・紙やすり(粗い〜細かいものを3,4種類ほど(例:#60、#120、#240、#400))

・布2枚(油を塗る用と、仕上げに拭く用。古着等のハギレでも◎)

・乾性油(紅花、ヒマワリ、胡桃、亜麻仁などの植物油)

※万力(あればなお良い)

準 備

・段ボールの上に新聞などを敷き、更に木の板などを置き、作業ができるようにします。

・手順2以降に出てくるような木板を準備して、作業台にできると尚良いです。


つ く り 方

1.木片にバターナイフの形を描きます。

 握りやすさなどを意識して、自分がつくりたい形を想像しながら、まずは鉛筆で下書きし、ペンでなぞります。

 この時、なるべく片側に寄せて描き、木片の元々の直線を活かすと、削る箇所を減らせます。

 ⚠木目の向きに注意。長手方向に木目が流れるようにしましょう。
  木目の向きを間違えると、簡単に折れてしまいます。


2. 上、横、下の3方向から、残す所と削る所がわかるように線を書いてみましょう。


3. 余分な所を糸鋸(いとのこ)でカットします。
  万力などで挟むと、力が入りやすくてオススメです。


4. カットできました。 カットしたことで無くなった線を描いておきましょう。


5. 小刀で削ります。利き手で小刀を持ち反対の親指で刃の背を押しながら少しずつ、慌てずひたすら削ります刃の背を押す親指が動く範囲内で、刃を動かすようにしましょう。

 ⚠利き手(画像は右手)の力だけで無理に削ったり、
  刃の進行方向に指を置くと大変危険です。


6.  描いた線を残しながら削り、線は最後に慎重に削ります。


7.  横から見ると、このようになります。


8. バターナイフの刃の部分は、均等の厚みになるように、両側から慎重に削ります。
小刀の刃先を使うと削りやすいです。


 ⚠撮影のため小刀に手を添えていませんが、必ず刃の背に親指を添えましょう。


9.   両側の厚みが決まったら、中央のやや厚めになっている部分を削ります。小刀を寝かせて薄めに削ります。


10. 刃の先部分は、板に付けて削るとやり易いです。


11.  この削る作業で、できるだけ最終形に近づけます。


12.  目の粗い紙やすりで形を整えます。

最初は#60前後で行います。
この作業で、傷や凸凹した表面を均して最終の形を決めます

 ⚠紙やすりは、数字が小さいほど目が粗く、大きく削れます


13.  形が決まったら、#120→#240→#400(例)と段階的に目の細かい紙やすりに変えながら、磨いていきます。


14.  磨きました!横から見ると、このようになります。


15.  焼印を入れる場合は、この段階で入れます。

 焼き印を入れた後に油を塗ります。

 ⚠先に油を塗ってから焼印をすると焦げますのでご注意ください。


16. 乾性油を布にとり塗っていきます

 塗ると艶と木目が美しく出てきます。別の乾いた布で拭いて、もう一度#400の紙やすりで磨き、さらに油を塗って拭いたら完成です!

※乾性油・・・紅花、ヒマワリ、胡桃、亜麻仁などの植物油で、空気に触れると固まります。

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(SNIクラフト倶楽部事務局)

干しかごを手作りし、本当の豊かさを思う

 非常時用の保存食作りを始めた。野菜などを天日に干して保存食にする。その際に使う干しかごを手作りした。材料はソテツの葉と竹。いつか使えると思って取っておいた頂き物のソテツの葉の出番となり、竹は実家の裏山のものだ。

手作りの干しかごで保存食を作る。椎茸と人参は雑炊の具にしたり、他の野菜と煮たりして活用。生姜は粉末にして紅茶や味噌汁に入れて使う

 まずは、鉈をトントンと振り下ろし、竹を縦に割っていく。スコンと割れた時は、とても心地がよい。この竹を格子状に組み、端を麻紐で一つひとつ結んでいく。時間はかかったが、基礎の枠組みができあがった。

 外周に使った細い竹は手でしならせて、少しずつ丸みをつけた。ものづくりの良さは、手などの感覚を通じて、ものの性質を体感できることだ。丈夫でありながら、しなやかな竹。その感触にふれるときに感動し、竹というものを創り出した、いのちの世界の豊かさを思う。
 格子状に組んだ竹にソテツの葉を挟み込んで完成した。短い葉が残ったので、それらを生かせるように、間に竹を渡す工夫もした。いのちを生かすこと。わずかなものも無駄にしないこと。クラフト製作から本当の豊かさを学んだ。

竹を格子状に組み、ソテツの葉を挟み込んでいく
ソテツの葉は硬く、かごを作る材料に適していると感じて選んだ

(Y・F / SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.115(2019年10月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.39」