作品名『竹皮の弁当箱』 作者:つしま屋
――今回お話しいただくのは、竹皮の弁当箱をつくられた、つしま屋さんです。
森や山に行って素材を自ら採り、その自然素材と対話する気持ちでクラフトをしているそうです。つくりたいと思ったきっかけや、材料探しをはじめあらゆるプロセスを大切にしているつしま屋さんならではのインタビューとなりました。
作品ストーリー
どのようなきっかけで、この作品をつくろうと思いましたか?
脱プラ(脱プラスチック)を意識しだしてから、竹の皮が急に気になりだしたのがきっかけでした。春先のたけのこの時期の皮ではなく、5月末頃の若竹のぐんと伸びる時期に、大きくなっていく竹に張りついていられなくなり、はらりと脱ぎ捨てられる竹の皮を使います。
――普段生活している中では、なかなか竹の皮に出合う機会はなさそうですがー。
知り合いの農家の方が所有する山で採らせていただきました。青々とした若竹に、ちまきなどを包む見慣れた竹皮が貼り付いているのを見た時は、とても興奮しました。採取した竹皮はよく洗って、汚れを拭き、平らになるよう重しを載せて、乾燥させます。よく乾かす!がポイントです。
その後、下処理した竹皮で何を作ろうかと考え、お弁当箱を編むことにしました。
――大きく育った若竹についている皮を見る体験は、そうなかなかできることではないですね。下処理も手間ひまかけて丁寧にされていて、自然からいただいた素材でクラフトができる感動はひとしおですね。
材料のポイント
材料を探すときの基準や大切にしていることはありますか?
材料は、主に自然素材、そして再利用することも含め「身の回りにあるもの」を使うことを大切にしています。
「なにかクラフトをしよう!」という発想ではなく、「身の回りにあるもの」をみて「閃き!」を感じた材料に対して、「これで何か表現できないかな?」と考えます。
例えば庭を剪定した時にできた枝や、枯れた花や野菜の皮、歩きながら見つけた自然素材など、気になるものは「いつか使えるかも?」と思い、捨てないでひとまず保存のために干します( ´∀` )。
保存食づくりを学んだ際、保存するためにはなんでも「水分を抜く(干す)」ことが大切だと実感しました。
――すぐ身近にある自然素材や再利用品を、日頃から大切に保存されているのですね。
材料を探す際は、どんなツールで調べますか?
材料そのものが自宅にない場合は、家の周辺で入手できないか探します。情報は図書館やインターネットで探したり、SNIクラフト倶楽部のFacebookグループ(メンバー限定の非公開グループ)で他の方の投稿もみたりして、参考にしています。
――常にさまざまな情報をキャッチするためにアンテナをむけていて、それがつしま屋さんの素敵な作品づくりに繋がっているのですね。
モノづくりスタイル
普段、どのような環境でクラフトをしていますか?
「どんな形につくろうか」などのイメージを沸かせる段階を終えて実際につくる時は、何をつくるかで環境・場所を変えています。
① 集中力がいるときや、考えながら細かい作業をする時は、勉強などをする自分の机でつくります。昼の時間帯が多いですね。
② 草木染や、竹皮を編む等、やることが決まっていて、淡々と作業をするときは、夜の時間帯ですべて家事が終わった後、食卓でテレビを見ながらなど…リラックスしてつくります。
③ 例えばクリスマスリースなど、材料や道具で部屋が汚れるものをつくる時は、屋外(庭)で地べたに座って作業しています。これは家事をする前の夕方が多いです。
また、SNIクラフト倶楽部のFacebookグループに作品を紹介(投稿)するために写真を撮影しますが、写真が暗くなるので夜間は撮影しないようにしています。投稿もできる限り明るいうちにします。
――何をつくるかによって、時間帯や場所を変えているのですね。ご自分の生活スタイルにあわせてモノづくりをすることで、より素敵な作品が生まれそうですね。
失敗は成功のもと!
ずばり「失敗は成功のもと!」と思う話がありましたら教えてください。
竹皮を触るにつれて、竹のザルや花かごなど竹製品に興味が湧きました。しかしそういったものは、竹を加工した竹ひごで作られています。
私は、竹ひごも加工する竹も持っていないので、「庭に生えている笹の木で、竹ひごの代用品をつくり、ザルやかごなどの製品をつくれないか?」とか、「乾燥した竹皮でつくれないか?」などと何度か試行錯誤しています。ですが未だにうまくできず完成していません。
しかし「新しいことに挑戦したい」、「これをやったらどうなるだろう?」と思いついたことを実行に移すときが、一番わくわくしますね。
――何事もやってみようという挑戦の気持ちや、実行するときのわくわく感が伝わってきます。できなくてもすぐに諦めず、つくり上げるまで常に工夫を重ねて挑戦しているのですね。
SNIクラフト倶楽部の活動を何年かしてきて思うことは、クラフトと全く関係のない他の事をするときにも、「簡単にあきらめない心」とか「どうすればいいか考えて、工夫すること」や、「たとえ完璧じゃなくても満足すること」などが自然に身についてきたように思います。
これは最近の気付きで、仕事や家事にも応用できているので、単純に手づくりをするクラブではなく、つくる過程やプロセスも大切にするSNIクラフト倶楽部の活動を続けてきたからこその功徳だと思っています。
作品のここに注目
今回、展示した作品について教えてください。
竹皮のカゴをつくった経験は無いので、頭に完成のイメージはあるのになかなか形にならず、何度か諦めかけました。
クラフト編みの本を読みながら、日を変えて気を取り直してチャレンジし、やっと形になりました。蓋(ふた)になる方が大きいサイズでつくったつもりが、そうならないなど難しかったです。
――竹皮の下処理や、編み込む様子をみるとその大変さが伝わってきます。何日間もかけて作られたのですね。
竹皮を水で濡らして編んでいると、手に香ばしい香りがしてきます。そして、あのケモノのような、ちょっと怖い模様が、不思議とだんだん美しく見えてきます。編んでいても、しなやかで、どんなに強く引っ張っても、丈夫で破れません。さらに、抗菌作用もある優れ物なんです。
私は竹皮を触っていると、いつも竹皮のおおらかさ、強さなど、まるで人格のようなものを感じます。編んでいるときは、いつも竹皮と結構リアルに対話しています(笑)。
竹皮は単に皮でおにぎりを包むのもいいし、とにかく何を入れても美味しく見えますね。竹皮自身は蜜蝋ラップ(※)とよく似ていて、洗ったら再びシャキッと張りが戻り、繰り返し何度も使用できます。
※蜜蝋ラップ・・・蜜蝋(ミツロウ)を布に染み込ませて作るラップで、洗って繰り返し使うことができる
――お店で売っている布や毛糸、加工された木材ではなく、森や山に入って自ら採取し、時間も労力もかかる下処理も丁寧に行い、素材そのものと向き合う姿勢に感銘を受けます。
さいごに
連載3回目となる「こもれび アナザーストーリー」。
作るモノを決めてから動き出すのではなく、身近な自然素材や身の回りにあるもので「これで何か表現できないかな?」「これをやったらどうなるだろう?」からの閃きを大切にしている、つしま屋さんならではのお話が聞けたと思います。
また、何事にもチャレンジしてつくってみようという気持ちが、さまざまな作品を生み出す原動力になっていると感じました。
読者のみなさまにとって、自分はどんなときにワクワクするだろう、どんな環境でクラフトをしているだろう、と振り返るきっかけになるとうれしいです。
次はどんなアナザーストーリーを聞くことができるのでしょうか?
次回もどうぞおたのしみに!
(聞き手:SNIクラフト倶楽部・松尾純子)
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