麦わらで作る“光のモビール”に癒やされる

 出会いは山梨県北杜市の農園。豊かな畑の横にある小屋に、なにかが吊り下がっていた。それは農園の奥さんが作ったもので、フィンランドの伝統工芸であり、「光のモビール」とも呼ばれる「ヒンメリ」だと知る。語源はスウェーデン語の「himmel(天)」。風に優しく揺れるそれはとても美しく、心を奪われた。


 農園の端の零れ種から育ったライ麦を、根元から1束いただいた。麦わらの皮を1本1本剥いていくと、中からツヤツヤと黄金色に光る茎が顔を出し、心が踊った。この茎を適当な長さに切り揃え、糸を通して結ぶ。そんなシンプルな作業から様々な幾何学模様が生まれるのだ。


 古代ヨーロッパのゲルマン民族は自然を大切にし、精霊信仰に基づく生活を送っていた。寒いフィンランドでは、ヒンメリを太陽神の誕生祭や収穫祭、クリスマスなどで飾り、家の魔除けのお守りでもあったという。そんな、麦わらと糸と祈りで結ばれたヒンメリ。眺めていると、豊かな優しさに癒やされ、神秘さを感じる。

Sさんが手作りした光のモービル・ヒンメリ。柔らかい光の中に、幾何学模様が美しく映える。

山梨県北杜市の農園で、初めて出合ったヒンメリ


(S・S / SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.106(2019年1月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.30 」