作品名『森の小人たち』
作者:ひだまりの家
――今回お話いただくのは、『森の小人たち』を製作されたひだまりの家さんです。
ひだまりの家さんはクラフトを通じて、脱プラスチックに取り組まれています。
また、材料は竹やとうもろこしの皮など自然のものを使用され、作品はおしゃれな小物から実用的なものまで多岐にわたっています。
作品ストーリー
どのようなきっかけで、この作品『森の小人たち』をつくろうと思いましたか?
SNIクラフト倶楽部に入部したことで、これまで買うことの多かったクリスマスの飾りを、手づくりしたいと思いました。このクラフト作品も、買わずにつくることができるかな?というワクワク感がありました。
――SNIクラフト倶楽部への入部で、気持ちに変化が生まれたのですね。ワクワクしながら作品に挑戦するって、すてきですね。
綿(わた)は、今回の作品をつくった年に参加した「綿栽培のボランティア」(無農薬・無化学肥料で栽培)で収穫したものを使いました。地元・兵庫県加古川市では、地域の地場産業として明治時代から綿産業が発達しています。収穫の際に指導してくださった方が、「農薬は植えているところだけではなく、その一定の場所周辺にも散布しない」とのお話に驚きとともに感銘を受けました。
綿紡ぎ体験では、綿繰り機(わたくりき)で綿とたねを分ける作業をさせていただきました。まわりには綿製品がたくさんありますが、綿が衣類などの製品になるまでに、糸を紡いだり、染色したり、機織りをするなど、気が遠くなるほどの労力が掛かっています。今回ボランティアに参加した事で、改めてその大変さを感じることができ、綿製品の有り難さに思い至りました。
この時にお会いしたプロジェクトリーダーの方が言われていた、「この地に綿を栽培することは、気候や土壌などが向いていて、本来の植生に基づいている」という自然を重んじる考え方が素晴らしく、印象に残っています。
――綿製品が地場産業の地域で暮らしながら、実際に綿(わた)の収穫を体験されたことで、綿製品を仕上げる大変さを感じられたのですね。
材料のポイント
材料を探すときの基準や大切にしていることはありますか?
庭などにある自然の素材を使うこと、手元にあるものを生かすことを大切にしています。最近つくったこちら(左下)の作品は、市内にある工務店さんから県産木材の端材をいただいてつくりました。
工務店さんのインスタグラムをフォローをしていて、「自由に使ってください」という発信を見て、端材をいただきに伺いました。この工務店さんには、以前にミニイベント(自身が主催)の会場としてもお世話になりました。
材料を探すときは、SNSの発信や雑貨屋さん、喫茶店のインテリア、地域で開催される街角ミュージアム(※)の作品などを参考にしています。
――インスタグラムなどのSNSも活用して、地域の方々との交流を大切にされているのですね。また、地元の工務店で地産地消の材料を入手されたり、街角ミュージアムのような地域の催しでクラフトのアイディアを発見されたりと、実際に足を運ばれて行動されていることがすばらしいなと思います。
※街角ミュージアム・・・街全体をミュージアムに見立て、作品やワークショップなどを楽しめる企画
モノづくりスタイル
普段、どのようにクラフトを楽しんでいますか?
リビングなどで音楽をかけることもあります。
時には、屋外(自宅駐車場)で行うこともあります。実家でもらった茣蓙(ござ)を敷いて、木材にやすりをかけたり、竹を割ったりします。おひさまのもとでするクラフトは、より“今”の感覚を味わえ、リフレッシュにつながりますね。
ダーニングなど修理をするリペアクラフトは、必要に応じて場所を変えて行っています。
また、天然の素材を使って手づくりすることで、プラスチックフリーにできないかな、これあったらいいな、と思うものをつくるようになりました。買う前にまず、家にあるものでつくれないかと考える習慣ができ、自然の美しさや恵みに気がつくようになりました。
――クラフトが気分転換になったり、日々の生活を豊かにしてくれると感じられながら、リラックスした気持ちで取り組まれているのですね。私も参考にしたいです。
失敗は成功のもと!
ずばり「失敗は成功のもと!」と思う話がありましたら教えてください。
製作途中で「うまくいかないな」と思うことは何度もあり、やめてしまったこともあります。
一方で、「最後まであきらめないでよかった」と思うこともありました。
例えば、2021年につくった竹製のマドラーは、持ち手を接着する際にすき間が埋まらず、どうしたものかと思案していました。しかしその時、持ち手の側面に、U字型に曲げた1本の細い竹を沿わせ、すき間を埋めることを思いつきました。持ち手の先端は、台所のフックに掛けることができ、もともと思い描いていたものよりも、良いものに仕上がりました。
導かれるようなひらめきは、「クラフトの神様が降りてきた」って思ったりします。
――竹製マドラー、もともと思い描いていたものよりも良いものができあがったときの喜びはひとしおだったと思います。普段から積極的にクラフトに取り組まれていることで、思いもよらぬひらめきが出てくるのですね。
また、スマホケースを厚紙と布でつくり、しばらく使っていましたが、強度がもうひとつで今は使っていません。いつか、木製のスマホケースをつくってみたいと思っています。
――新しい目標を見定めていらっしゃるところがすばらしいです。木製のスマホケース、作り甲斐がありそうです。一度、布でつくってみた経験が、次のクラフトにつながっていく楽しみもありますね。
作品のここに注目
今回、展示された作品について教えてください。
小人の足元はどんぐりの殻斗(かくと)です。ビックリするほどサイズがぴったりでした。腕は、南天の実やどんぐりで表現したことで、意外性と可愛らしさが両立できたかな、と思います。
――今にも踊り出しそうなとてもかわいらしい人形ですね。どんぐりの殻斗は、本当に小人の靴のように見えます。すべてのパーツが全体的に調和していて、とてもすばらしいです。
※殻斗(かくと)・・・ナラ・クヌギ・シイ・クリなどブナ科植物の、実の一部または全部を覆う椀(わん)状・まり状のもの。
さいごに
連載5回目となる「こもれびアナザーストーリー」。
地元でのつながりを大切に、身近な材料や地域のものを活用して、さまざまなクラフトを楽しまれているひだまりの家さんのお話を聞くことができました。
試行錯誤を繰り返しながら、よりよいものをつくりだそうという気持ちが、作品を見る人の喜びにつながっていくのだと感じました。
今回の記事を通して、クラフトを始められるみなさまには、これからさまざまな試行錯誤を通して、すてきな作品づくりに挑戦して頂ける機会になればと思います。また、すでにクラフトを楽しんでいるみなさまには、これまで経験した試行錯誤や、アイデアが浮かんだときの喜び、達成感を得たときの気持ちを思い出していただくなど、ご自身のクラフト時間を楽しく振り返るきっかけになっていましたら、嬉しく思います。
次はどんなアナザーストーリーを聞くことができるでしょうか?
次回もどうぞお楽しみに!
(聞き手:SNIクラフト倶楽部・岸田)
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